PROJECT STORYプロジェクトストーリー01
プリント配線板事業Printed wiring board business
シライ電子工業の
プリント配線板が、
海外でも評価されるまで。
シライ電子工業の主力事業であるプリント配線板事業の歴史。
それは、日本のエレクトロニクス産業の発展を支えてきた歴史である。
1966(昭和41)年、創業社長・白井治夫(現在、名誉顧問)の京都にあった自宅アパートの一室で創業。
数々の障壁を乗り越えながら「世界のシライ」に成長させてきた。
そんなシライの歩みを振り返るとともに、いま世界のモノづくりの最前線で活躍する営業社員から見た世界基準シライの強さを聞いた。
シライ電子工業の中国・深圳法人を拠点に、海外営業に取り組む川手寛朗。広島出身で京都の大学に通い、4年生時にタイを旅行した際に見た日系メーカーの看板の多さに驚き、海外展開するメーカーへの入社を志望。シライ電子工業で、「全国、いや世界どこでも働きます」とアピールして入社。入社2年目から海外で活躍中。
シライ電子工業の海外営業拠点がある中国・深圳(シンセン)の街並み。
人口は1400万人以上。中国屈指の世界都市であり、商工業が発展している。
中国・広東省の珠海に設立したシライ電子工業100%資本の工場。海外における製造事業の主力工場だ。
電子機器に必ず使われるプリント配線板の事業。
技術力×人材力で、海外展開するほど成長した。
まずは、シライ電子工業の歴史を振り返ろう。はじまりは、基板の穴あけ作業。そこから、次のステップである基板そのものの製作技術を学んでいき、松下電池工業(現在・パナソニック)への納品を皮切りに、仕事の幅が基板の製作から実装までトータルに広がっていく。急速に日本のエレクトロニクス産業が拡大していく中、数ある競合他社の中で、シライ電子工業が選ばれたのは高い技術力と信頼があったからだ。技術力を高めるために、早い段階から新卒大学生の採用と人材育成に力を注いだ。営業面では、主力の取引製品だったアミューズメント関連からクルマ関連やデジタル家電、通信事務機器、ホームプライアンスなど、幅広い分野の顧客開拓に挑み、安定した経営ができるようになった。
中国進出したが、大きな壁がたちはだかる。
だが、けっしてあきらめずに挑戦を続けた。
そして、シライ電子工業の命運を大きく左右したのが、中国進出だった。バブル崩壊後、中国の某基板メーカーと合弁会社を設立し、1995(平成7)年に中国本土で新工場の操業を開始したが半年で失敗。中国企業と合弁会社を作ってビジネスを行う難しさを経験した。しかし、そこであきらめることなく、すぐに香港で営業拠点を開設。自前の工場は持たないが、シライ電子工業が受注したプリント配線板の製造は、提携した中国の工場に生産委託し、海外事業を展開していった。 海外での実績を積み重ねていき、2007(平成19)年にいよいよ独立資本のプリント配線板製造の会社を中国・広東省の珠海に設立。現在は、中国に製造工場を2ヵ所・営業拠点を2ヵ所、2015(平成27)年にはタイにも販売拠点を立ち上げ、海外事業を拡大させた。いまではシライ電子工業の売上は、海外が50%を超えている。
入社2年目から海外で働く営業社員が語る
日本国内と海外におけるビジネスの違いとは?
シライ電子工業を一時挫折させ、その後は逆に飛躍のきっかけとなった海外事業。そんな海外で入社2年目から働く営業社員がいる。現在、中国・広東省の深圳にある海外営業本部に在籍する川手寛朗である。深圳での勤務は2005(平成17)年からで、中国でのビジネスは11年以上のキャリアだ。
日本国内と海外におけるビジネスの違いは何だろう。「まず、規模が圧倒的に違います。プリント配線板の単価自体は安いのですが、扱う金額は億単位。お取引先から求められる量が国内と比べて1桁から2桁も多いですね」。
市場が大きい分、世界各国の競合企業がひしめく。にも関わらず、シライ電子工業への評価は高い。製造工場は常にフル稼働だ。シライ電子工業が選ばれる理由、それは「Quality(品質)」「Cost(費用)」「Delivery(納期)」を徹底していること。そして強い営業力にある。「不具合が起きない製品をできるだけ安く、しかもお客様が希望される納期に合わせて納品する。そうした当たり前のことを徹底してきたことで信頼を獲得してきました。お客様が安心できるようにプロジェクトを舵取りしたり、何かあればすぐに対応したりするなど、シライ電子工業は営業マンの活動全般も評価されていると思います」。
シライ電子工業の深圳オフィスからの眺め。
これまでにない製品を開発し、
新たな市場、ヨーロッパをめざす旅へ。
川手の目標は「会社全体で5年以内に売上500億円・営業利益25億円を達成すること。そうして自分の生活をさらに豊かにすること」と断言する。そのために力を入れているのは、新しいことに挑戦することだ。「これまでの取引先は99%が日系企業。目標を達成するには、新たな地域で取引先を開拓することや、これまで取り扱っていない製品を開発から取り組むことが必須です。実はいま、まさにそれを実行しているところ。先日、初めてドイツのお客様を開拓しました。シライ電子工業の技術者たちとともにドイツに出向き、これまでにない製品の開発を進めているところです」。
日本と同じく技術立国であるドイツ企業からも評価されはじめたShirai製品。シライ電子工業のプリント配線板事業が、モノづくりニッポンの最前線を支え、その評価が世界に広がっているのは、こうしたシライ電子工業の社員たち一人一人の熱い姿があるからであろう。