PROJECT STORYプロジェクトストーリー02

VISPER・ソリューション事業VISPER・Solution business

プリント配線板の検査機市場で、
世界トップシェア!

プリント配線板製造の最終工程で、不良品を見つけ出すための検査機。
その開発・製造に成功した世界で唯一の基板メーカーがシライ電子工業だ。
世界20ヵ国以上、世界の基盤メーカー上位50社の約64%が導入するシライ電子工業の検査機。
ブランド名は「VISPERシリーズ」。
世界トップシェアを誇り、基盤業界全体の品質向上にも貢献するVISPER開発秘話に迫る。

大塚昌彦事業部長(写真中央)をはじめ、VISPER・ソリューション事業部の社員たち。豊かな経験とフレッシュな若さがマッチしたチームだ。

これが世界のプリント配線板の製造現場では欠かせなくなってきたVISPERシリーズの一つ。デザイン性も重視して開発された。

従業員の負担を軽減し、
品質を高めるために
プリント配線板の検査機の
開発チームが誕生。

 海外進出に再度挑戦して軌道に乗せたシライ電子工業は、1998(平成10)年3月、新たな開発に取り組みはじめた。それはプリント配線板の表面すべてが正確につくられているかどうかを確認する検査機の開発。めざすは検査作業の機械化だ。他の製造工程では機械による自動化が進んでいたが、実はこれまで最終工程の検査は、約40人もの従業員が昔ながらの目視で一つ一つ確認していたのである。
 人間の肉眼に頼って、精密なプリント配線板の表面をチェックするのは労力がかかる。その上、完璧には不良品を見つけ出すことができない。何より検査員たちの目の疲れや、「これ以上、不良品を出荷してはいけない」という精神的なプレッシャーが大きすぎる。プリント配線板の検査機の開発プロジェクトのきっかけは、当時の白井社長の「みんなを何とかしてあげたい」という思い、そして「検査の精度を高め、品質の安定性をはかる」という自社品質へのこだわりからだった。

開発当初からVISPERに関わってきた開発・技術部長の鈴木真也。
「自分が作ったもので、世界で多くの人に喜んでいただく。その喜びはとても大きいですね」

パンフレットは日本語版、英語版、中国語版の3種類を用意。

ソフトとハードの数々の課題をクリアし、
検査作業における
世界的な技術革命に成功!

 最初から開発プロジェクトメンバーの一人だった鈴木真也(現在、VISPER・ソリューション事業部/開発・技術部部長)。当時、入社してまだ数年の若手だった。「開発にあたって、実際にプリント配線板メーカーである自分たちにとって、本当に必要とするものは何なのかを徹底的に考えました。私たちだからこそ、わかること・できることがきっとあるはずだと」。開発メンバーたちがめざしたのは、見本となる正常な基板の画像と、量産品とを照らし合わせ、その「違い」を発見することで、不良品を見つけられる検査機の開発。ソフトウェアやハードウェアなど数々の課題をクリアしながら開発を進めていった。「『この検査機が完成したら、シライ電子工業にとってはもちろん、業界全体にとっても価値あるものになるぞ!』。当時、メンバーたちはそう奮起しながら、開発に力を注ぎました」(前出・鈴木)。こうして年内にはVISPERシリーズの試作品が完成。検査員たちの負担は軽減し、シライ電子工業が作るプリント配線板の品質は大幅に向上していった。

競合他社にVISPERを販売する!?
なぜ、そんな無謀な行動に出たのか?

 VISPERの改良がさらに進むと、シライ電子工業は基板業界を驚かせる行動に出た。なんとVISPERを、他社でも使えるように販売をスタートしたのである。その他社とはライバルとなる競合企業!もしかすると敵に塩を送ることになるかもしれない。しかし、これまでの常識に固執しない挑戦をしたのはなぜなのか?鈴木とともに若くして当初から開発プロジェクトメンバーだった大塚昌彦(現在、VISPER・ソリューション事業部/事業部長)は話す。「もともと基板業界は『不良品が出るのが当たり前』という風潮がありました。そんな中、VISPERを使って品質を安定させられる企業がシライ電子工業だけではなく、もっと増えれば基板業界全体のレベルが上がる。そんな使命感がありました。そしてVISPERが普及し、グローバルスタンダードにまで育て上げれば、シライ電子工業が世界の基板業界をリードすることができる。シライ電子工業は世界で大きく飛躍することをめざしたのです」。

京都にあるVISPERショールームでは、実際に試してみたり、製品のデモンストレーションの見学などができる。

競合からも評価され、世界20ヵ国以上で販売。
世界の業界全体のレベルアップに貢献。

 それからもVISPERは常に改良を加えている。販売は順調だ。国内をはじめ、世界の名だたる基板メーカーに評価され、中国、タイ、オーストリア、アメリカ、ドイツなど世界40ヵ国以上に展開していった。現在、シライ電子工業が開発・製造するVISPERのシェアは世界トップ。プリント配線板の事業と、その検査機「VISPER」の事業展開によって、モノづくりニッポンを代表するメーカーとして世界で飛躍していった。